建て替えのメリット|リフォーム・リノベーションの違いも解説
2023.09.10
現在、住んでいる家を修繕したい場合、建て替えとリフォーム・リノベーションという2つの選択肢があります。リフォームとリノベーションは厳密には異なりますが、いずれも建て替えと対になる概念です。それぞれにはメリット・デメリットがあり、家の状況や住んでいる人の状況によって、どれを選ぶべきかが変わってきます。
この記事では、建て替えとリフォーム・リノベーションの違いについて、詳しく解説します。さらに、建て替えとリフォーム・リノベーションで迷った場合の考え方についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
1. 建て替えとは?リフォーム・リノベーションの違いも
古い家を修繕する方法としては、まず建て替えが挙げられるでしょう。古い家の工事の方法には他の選択肢として、リフォーム・リノベーションがあります。ここでは、建て替えとリフォーム・リノベーションの概要と相違点を解説します。
1-1. 建て替え
建て替えとは、既存の住宅を基礎部分まですべて取り壊し、一から住宅を建築する方法です。
建て替え工事では基礎部分まで取り壊すため、一度土地を更地に戻します。また、建てるときは、基礎工事より前の段階の地盤調査や、必要であれば地盤改良工事などから行います。住宅を建てる工程は、古い家を取り壊す必要がある点以外、ほとんど新築の住宅を建てるのに近いと考えてよいでしょう。
また、古い家を建て替える際は、取り壊す前の物件と同じ条件ではなく、現行の建築基準法にのっとって建てる必要があります。
1-2. リフォーム
リフォームとは、住宅の基礎部分を残した状態で部分的に施工し、新築同様の状態に改築や増築、修繕を行うことです。
リフォームの方法は、水回りや屋根などの部分リフォームと、全体的に回収を行うフルリフォームの2通りです。ただし、フルリフォームであっても、リフォームの際には住宅の基礎部分だけでなく、柱や梁、床といった骨組みの部分も残したまま工事します。そのため、フルリフォームと言っても、建て替えに比べると、工事の範囲・規模は部分的です。
1-3. リノベーション
リノベーションとは、既存住宅の機能性や価値をより高めるための改装工事です。賃貸アパートや賃貸マンションで、空き部屋対策として行われることもあります。
リノベーションの定義はリフォームとよく似ていますが、厳密には工事の方向性が異なります。リフォームは老朽化や劣化が進んだ部分の回復を目的とする一方で、リノベーションは新築に戻すより価値が高まった状態に改良することが目的です。
たとえば、単なる設備の交換や外壁塗装はリフォームに、より住みやすい間取りに変える場合や外壁をより高性能なものに変える場合は、リノベーションに分類されます。
2. 建て替えのメリット・デメリット
建て替えは、リフォームやリノベーションと比較すると、家の地盤や基礎から建て直す点が最大の特徴です。ここでは、建て替えを選択するメリット・デメリットを詳しく解説します。
2-1. メリット
建て替えのメリットは、主に次の3点です。
- はじめから設備や間取りを見直せる
- 基礎から安全性を見直せる
- 住宅ローンで資金調達できる
建て替えの場合、一度土地を更地に戻すため、工事の際にはもとの住宅の形や間取りを気にする必要がありません。設計や導入したい設備を一から考え直せるので、新しく住宅を建てる場合と同様に設計の自由度が高く、施主の希望を取り入れやすくなります。修繕を機に理想の家づくりを実現したい人には、建て替えがおすすめです。
また、建て替えには住宅ローンが活用できるため、資金調達が柔軟にできる点もメリットです。住宅ローンに残債があっても、住宅ローンと建て替えローンの1本化や、ダブルローン・親子ローンなども利用でき、多重ローンを回避できる仕組みも整っています。持ち家の建て替えであれば、新築住宅の購入と異なりすでに土地があるため、融資額も建物の建築費用だけで構いません。
なお、1981年5月31日以前に建築確認申請が行われた住宅は旧耐震基準で建築されており、ほとんどの場合で「耐震等級1」を満たしていません。
1981年6月1日以降に建築確認申請が行われた家は新耐震基準で建築されており、耐震等級1を最低基準としてクリアしています。さらに、2000年6月1日以降に建築確認申請が行われた住宅からは、阪神淡路大震災での被害が考慮された新基準が導入され、より強固でバランスのよい家が義務化されました。
このように、耐震基準は現行の基準に至るまで2回の見直しがあり、1981年5月31日以前の住宅は大地震に耐えられない可能性が高く、危険といえます。
2-2. デメリット
一方、建て替えのデメリットには次のような点が挙げられます。
- 費用が高く、工期が長くなりやすい
- 仮住まいを用意する必要がある
- 建て替え前と同等の住宅が建てられない場合がある
建て替えの場合は地盤調査からやり直す必要があり、工事は総じて大がかりになるため費用も工期もかかります。工事中は、仮住まいの準備・家賃や引越し費用などの負担も必要です。もっとも、リフォーム・リノベーションの場合でも、仮住まいが必要な場合もあり、費用の負担は建て替えに限った問題ではありません。
また、取り壊す住宅が古い建築基準法にのっとって建てられている場合、現行の法律に合わせて規模が縮小される可能性もあります。ただし、改正以後に建てられた家の場合は、規模の縮小を心配する必要はありません。
3. リフォーム・リノベーションのメリット・デメリット
リフォームやリノベーションは住宅のベースとなる部分を維持したまま工事を行うため、建て替えとは異なる特徴があります。ここでは、リフォーム・リノベーションを選択するメリット・デメリットについて詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
3-1. メリット
リフォーム・リノベーション共通のメリットは、以下の通りです。
- 工事の規模を自分で選べる
- 工期が短く、予算を組みやすい
- 仮住まいが必要ないケースがある
リフォーム・リノベーションは、部分的に住宅の工事ができる点が特徴です。施主側が工事の規模をコントロールすることで、希望の工期や予算に応じた工事ができます。大がかりな工事の場合は仮住まいが必要になることもありますが、部分的な施工であれば仮住まいはほとんど必要ありません。
3-2. デメリット
リフォーム・リノベーションのデメリットは、次の3点です。
- 工事の効果が限定的になる
- 予想外に費用がかかることがある
- 大規模な工事は費用が割高になる
リフォームやリノベーションでは、住宅の基礎部分や骨組みには手を加えないため、基礎部分や骨組みの問題に通常は対処できません。また、既存の住宅の間取りや構造がベースとなるため、施主の希望が叶えられない場合や、部分的な施工でも追加費用が発生する場合があります。
リフォーム・リノベーションが建て替えより工事費用を抑えられるケースは、単純に工事の規模を縮小した場合です。工事の費用そのものが安いとは限らないので、工事が大がかりになるほど費用が高くなる傾向にあります。そのため、リフォーム・リノベーションは、大規模な修繕には向いていないと言ってよいでしょう。
4. 建て替えかリフォーム・リノベーションで迷った場合は?
建て替えとリフォーム・リノベーションで迷った場合は、下記の観点を参考に判断しましょう。
(1)築年数・家の状態
築年数が長い家や、基礎・骨組みが劣化している家は建て替えがおすすめです。築年数が長い家やシロアリなどのトラブルに見舞われた家は基礎から修繕する必要性が高まります。基礎や骨組みの状態がよく、一部の設備や建材が劣化しているだけであれば、リフォームやリノベーションで対応できます。
(2)予算・費用
家の修繕にかけられる予算や費用から、修繕方法を選ぶのも1つの方法です。建て替えは、ある程度の建築費用にくわえて、仮住まいなどの諸費用がかかるため、家の修繕としては費用が高くなります。一方で、部分的なリフォーム・リノベーションであれば、コストを抑えられる可能性があります。ただし、大規模なリフォーム・リノベーションの場合は、建て替えと変わらなくなってしまうこともあるため注意しましょう。
(3)将来的に住み継ぐ可能性
施主だけでなく、将来的に子や孫が住み継ぐ可能性が高いのであれば、建て替えがおすすめです。基礎からの建て直しになるので、耐震性能も万全に整えられます。反対に、誰も住み継ぐ予定がない場合は、リフォームやリノベーションで対応するとよいでしょう。
現在の住みやすさだけを考えた場合は、建て替えでもリフォーム・リノベーションでも、大きな差はありません。しかし、長期的な住みやすさや資産価値を考えた場合は、建て替えのほうが有利な傾向にあります。短期的な視点だけではなく、長期的な視点も考慮に入れつつ、建て替えとリフォーム・リノベーションを選択しましょう。
まとめ
建て替えとは、住宅の基礎部分を含め、すべてを取り壊して一から住宅を建てる方法です。一方で、リフォーム・リノベーションは住宅の基礎部分を残した上で、部分的に修繕・改築することを指します。
建て替えは更地から住宅を建て直す方法であるため、設計の自由度が高く、基礎から安全性を見直すことができます。
建て替えとリフォーム・リノベーションで迷った場合は、家の状態・築年数や予算・費用、将来的な計画から判断することがおすすめです。特に、今後もその家で生活を続けていく場合は、建て替えとリフォーム・リノベーションについて、長期的な視点から判断しましょう。