一次エネルギー消費量等級とは?省エネに関する補助金も紹介
2024.01.25
一次エネルギー消費量等級は、住宅の設計時に予想されるエネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)を、標準的な住宅性能(基準一次エネルギー消費量)で割って算出される「Building Energy Index(BEI)」に基づいています。
一次エネルギー消費量等級は、住宅の省エネ基準適合性を判断する指標となっており、省エネ性能の高い住宅を目指す際の基準として用いられます。
当記事では、一次エネルギー消費量等級や断熱等性能等級について紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1.一次エネルギー消費量等級とは?
一次エネルギー消費量等級とは、2013年に日本で確立された基準で、住宅の1年間のエネルギー消費量を数値化した指標です。
この等級は、住宅の設計段階で予想されるエネルギー消費量(設計一次エネルギー消費量)を、標準的な性能を持つ住宅のエネルギー消費量(基準一次エネルギー消費量)で割ることにより算出されるBEI(Building Energy Index)に基づいています。このBEIの数値が小さいほど、エネルギー効率が高いと評価され、より高い等級に分類されます。
等級 BEI 等級6 0.8以下
※太陽光発電設備によるエネルギー消費量の削減は見込まない等級5 0.9以下 等級4 1.0以下 等級3(既存のみ) 1.1以下
たとえば、BEIが1.0以下であれば等級4、0.9以下であれば等級5、そして最高等級である等級6はBEIが0.8以下である必要があります。2022年の法改正により、新たに等級6が最高位に設定されたことで、省エネ基準はより厳格化されました。
国が定める省エネ住宅の基準では、一次エネルギー消費量等級4以上が求められることになっています。この基準は、住宅のエネルギー消費を減らし、環境への影響を軽減するための重要な指標となっています。
2.断熱等性能等級とは?
断熱等性能等級とは、住宅の断熱性を評価するための日本の基準です。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づき、住宅の省エネ性能を数値で示す等級制度で、1から7までの等級が設定されています。この等級が高いほど、断熱性能が優れており、エネルギー効率の高い住宅とされます。たとえば、等級7は熱損失を著しく削減する対策が施されている住宅を指し、等級が下がるにつれて熱損失削減の程度は低くなります。
等級7 熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている 等級6 熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている 等級5 熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている 等級4 熱損失等の大きな削減のための対策(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じられている 等級3 熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている 等級2 熱損失の小さな削減のための対策が講じられている 等級1 その他
引用:国土交通省「省エネ性能に係るさらなる上位等級(戸建住宅の断熱等級6・7)の基準(表示方法)」引用日2023/12/21
この等級制度は、住宅の「UA値」に基づいています。UA値とは、外皮平均熱貫流率のことで、住戸内外の温度差1度あたりにおける総熱損失量(ただし、換気による熱損失量を除く)を外皮の面積で割った数値です。要するに、家の中の熱が外壁や屋根、開口部を通じてどれだけ逃げるかを示す数値です。UA値が低ければ低いほど、住宅は熱を逃がしにくく、より高い断熱等性能等級が与えられます。
2022年までは等級4が最高でしたが、省エネ性能がより高い住宅の出現に伴い、等級5から7が新設されました。これにより、より高い断熱性を持つ住宅が評価されるようになり、省エネ住宅の基準がさらに厳格化しています。また、地域によってUA値の基準が異なるため、同じ等級であっても寒冷地ではより厳しい基準が設けられています。
3.省エネ性能の等級が高い住宅を購入するメリット・デメリット
続いて、省エネ性能の等級が高い住宅を購入するメリットとデメリットを紹介します。現在、住宅の購入を考えている方は、それぞれのポイントを押さえておくようにしましょう。
3-1.メリット
省エネ性能が高い住宅を選ぶことには、暮らしやすさ・光熱費負担の軽減など、大きなメリットがあります。
・省エネ住宅は断熱性と気密性に優れている
室内の温度を一定に保つのに必要なエネルギーが少なくて済むのがメリットです。冷暖房にかかる電気代などの光熱費を大幅に節約できます。特に冬の寒い時期や夏の暑い時期には、この効果が顕著に表れ、長期的に見ると家計に優しいです。
・快適で健康的な環境を実現できる
省エネ住宅は、室内の温度差を最小限に抑えることができるため、家のどの部屋にいても快適に過ごせます。この均一な温度は、寒暖の急な変化による健康リスク、特にヒートショックと呼ばれる現象を防ぐのに役立ちます。ヒートショックは、急激な温度変化が原因で血圧が変動し、心臓や血管などの疾患を引き起こす問題です。また、高断熱性能により結露が少なくなるため、カビやダニの発生を防ぐことができ、アレルギーやアトピーのリスクも低減されます。
・経済的な面でのメリットがある
たとえば、住宅ローン減税や補助金制度など、省エネ住宅を購入する際に受けられる税制上の優遇措置があります。これらの制度を活用することで、初期投資の負担を軽減でき、経済的にもお得です。
3-2.デメリット
省エネ性能の等級が高い住宅を購入する際には、初期費用が高い・業者の選定が難しいなど、いくつかの注意点があります。
・初期費用が高い
一般的な住宅と比較して初期費用が高くなる傾向があります。省エネ住宅は、高品質な断熱材や高性能な省エネ機器など、高い断熱性や気密性を実現するために、通常の住宅に比べて施工のコストがかかります。ただし、長期的な視点で見れば、この初期投資は、光熱費の節約や修繕の少なさなどによって相殺される可能性も高いです。さらに、補助金や税制優遇措置を活用することで、この初期費用の負担を減らすことも可能です。
・適切な業者の選定が難しい
省エネ性能の高い住宅を建てるには特化した技術や知識が必要であり、すべての建築業者がこのような住宅の建築に対応しているわけではありません。したがって、自分のニーズに合った省エネ住宅を建てられる業者を見つけることが重要です。
4.省エネ住宅に関する補助金制度
一次エネルギー消費量等級について調べている方であれば、省エネ住宅に関する補助金制度についても押さえておくとよいでしょう。制度は毎年アップデートされたり、申請期限があったりするものが多いので、その都度最新情報を取得するのが大切です。
4-1.ZEH補助金
ZEH補助金は、省エネルギーを重視した「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の新築または購入に際して提供される支援制度です。ZEHは、高い断熱性能とエネルギー効率の良い設備を通じて、年間のエネルギー収支をゼロもしくはそれ以下にする住宅を指します。太陽光発電システムなどを利用して家庭で消費する以上のエネルギーを生み出すことを目的としています。
ZEH補助金は、ZEHの建築や購入を支援するために、さまざまな条件を満たした住宅に対して提供されます。
【個人向けの補助事業】
- ZEH支援事業(ZEH、ZEH+)
- 次世代ZEH+(注文・建売・TPO住宅)実証事業
- 次世代HEMS実証事業
たとえば、一定の基準を満たすZEH住宅には55万円/戸、さらに高い性能を持つZEH+住宅には100万円/戸の補助を行っています。
出典:環境共創イニシアチブ「2023年の経済産業省と環境省のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金について」
ZEH補助金は、省エネ性能に優れた住宅の普及を促進しています。長期的には光熱費の節約につながり、快適かつ環境に優しい住まいを実現できるでしょう。また、災害時に備えた蓄電機能など、防災面でもメリットが大きいです。
4-2.子育てエコホーム支援事業
「こどもみらい住宅支援事業」や「こどもエコすまい支援事業」という制度を聞いたことがあるかもしれません。こどもみらい住宅支援事業は、2023年にこどもエコすまい支援事業となり、2024年は「子育てエコホーム支援事業」として、予算が割り当てられています。
子育てエコホーム支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯が省エネ性能の高い新築住宅を取得する際や、住宅の省エネ改修を行う際に補助金を提供する制度です。この事業の目的は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、省エネ投資を促進し、エネルギー価格の高騰に対応する家計の支援を行うことです。
補助金の額は、新築住宅の場合、最大100万円(長期優良住宅)または最大80万円(ZEH住宅)、リフォームの場合は最大30万円(子育て世帯・若者夫婦世帯)となっています。補助金の申請と受け取りは、事務局に登録された補助事業者が行います。
4-3.地域型住宅グリーン化事業
「地域型住宅グリーン化事業」は国土交通省によって推進されている、地域の木材関連事業者、流通事業者、工務店などによる木造住宅の整備を支援する事業です。この事業の目的は、地域の木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷を低減することにあります。
補助の対象は、採択されたグループごとに定められた共通ルールに則り、中小住宅生産者等によって供給される、省エネ性能に優れた木造住宅です。この補助の対象となる住宅には、認定長期優良住宅、ZEH、Nearly ZEH、ZEH Oriented、認定低炭素住宅などが挙げられます。それぞれ特定の条件を満たす必要があり、加算措置(地域材加算、和の住まい加算など)を利用することで、最大140万円/戸の補助が可能です。
出典:国土交通省「報道発表資料:令和5年度地域型住宅グリーン化事業のグループ募集を開始します」
※地域型住宅グリーン化事業は、近年では毎年実施されていますが、各年で制度内容が若干異なることが多いので、最新情報を確認しましょう。こちらは、2023年度事業を基にしています。
まとめ
一次エネルギー消費量等級では等級4・等級5が省エネ基準、断熱等性能等級では等級4が省エネ基準となっています。
国はZEHの普及を目指して、さまざまな政策に取り組んでおり、一次エネルギー消費量等級や断熱等性能等級が高い住宅は、環境にも優しいです。長期的に見れば、経済的な選択とも言えるでしょう。
特に高齢者は急激な温度変化に弱く、暖房のないトイレや浴室ではヒートショックなどのリスクが高まります。省エネ住宅はこうしたリスクを減らすのにも役立つでしょう。