木造住宅と鉄筋住宅の違い|メリット・デメリットも解説
2023.12.21
マイホームの購入を考えている方の中には、木造住宅にするべきか、鉄筋住宅にするべきかで悩んでいる方がいます。建物の構造によってコストや住宅の性能は異なるので、家を建ててから後悔しないためには、家を建てる前にしっかりと木造住宅と鉄筋住宅の違いを把握しておくことが大切です。
この記事では、木造住宅と鉄筋住宅の違いについて、コスト・耐震性能・耐用年数・防音性能という4つの観点から詳しく解説します。また、どのような場合に、木造と鉄筋のどちらが良いのかについても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
1.木造住宅と鉄筋住宅の違い
そもそも木造住宅とは、柱・梁・壁などの住宅構造部分に木材を使用した住宅です。一方で鉄筋住宅(鉄筋コンクリート造住宅)は、住宅構造部分に鉄筋コンクリートを使用した住宅を指します。
木造住宅と鉄筋住宅の違いは、使用する建材だけではありません。以下では4つのポイントで、木造住宅と鉄筋住宅の違いを説明します。
1-1.コスト
住宅建築にかかるコストは、鉄筋住宅のほうが木造住宅よりも高い傾向にあります。鉄筋コンクリートに使用する鋼材・コンクリートなどの原材料費は、木材よりも高いためです。
2021年に起きたウッドショックなど、世界情勢の影響によって木材価格が高騰し、木造住宅のコストが高くなるケースもあります。
しかし、市場変動の影響は鋼材のほうが受けやすいため、住宅建築にかかるコストは基本的に鉄筋住宅のほうが高くなるでしょう。
1-2.耐震性能
耐震性能は木造住宅と鉄筋住宅の間で大きな違いはないものの、より長く耐震性を保てるのは鉄筋住宅です。
そもそも木造住宅と鉄筋住宅は、住宅の地震対策に下記のような違いがあります。
木造住宅の地震対策 | 木材がしなることで揺れを吸収し、耐震性を高める |
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鉄筋住宅の地震対策 | 鉄筋とコンクリートの強度により、地震の揺れに耐える |
木造住宅は、構造体に使用されている木材が地震の揺れを吸収します。何度も地震の揺れを吸収していると、しなった木材にダメージが蓄積されて折れる可能性がある点に注意してください。
1-3.耐用年数
耐用年数は木造住宅が22年、鉄筋住宅が47年です。
木造住宅と比べると、鉄筋住宅には倍以上の耐用年数があります。
ただし、耐用年数はあくまでも法律で定められた「建物の資産価値が消滅するまでの期間」であり、実際の建物の耐久性を示す数値ではありません。木造住宅が築22年を超えると住めなくなるわけではないため、安心してください。
1-4.防音性能
住宅の防音性能は、鉄筋住宅のほうが木造住宅よりも高いとされています。鉄筋住宅は比重が大きいコンクリートを使用していて、生活音・騒音を遮る「遮音性」に優れているためです。
木造住宅も、住宅の工法などによって防音性能を高めることが可能です。木造住宅の防音方法には、壁への吸音パネルの設置や、床への防音素材の使用があります。
2.木造住宅のメリット・デメリット
木造住宅は日本で一般的な住宅構造であり、木造建築のノウハウを持った住宅会社が多いなどの特徴があります。木造住宅のマイホームに魅力を感じている方は、以下で紹介するメリット・デメリットをぜひ参考にしてください。
2-1.メリット
木造住宅の代表的なメリットが「建築費用を抑えられる」ことです。
木造住宅の構造体に使用する木材は価格が比較的安く、新築住宅を建てる際の費用を抑えられます。
木造住宅には、他にも下記のメリットがあります。
・木材の特性を利用した住宅が建てられる
木材には調湿性や通気性といった特性があり、木材を使用した木造住宅にも木材の特性は反映されます。湿気によるカビや結露が生じにくく、快適な住環境のマイホームを建てることが可能です。
・地盤が弱い土地にも建てられる
木造住宅は鉄筋住宅よりも構造体の重量が軽く、地盤が弱い土地にも住宅を建てられます。
・希望に近い建築デザインを選べる
木造住宅の建築は多くの住宅会社が対応できるため、住宅会社の選択肢を増やせます。さまざまな提案の中から、希望に近い建築デザインの住宅を選べるでしょう。
2-2.デメリット
木造住宅には「職人の腕によって仕上がりの品質が左右される」というデメリットがあります。
木造住宅は職人が建築現場で組み上げて建てるため、住宅会社選びでは信頼できる職人がいるかどうかが重要です。
他にも、下記のようなデメリットに注意してください。
・間取りの自由度が低い
木造住宅で一般的なツーバイフォー工法は建材のサイズが決まっているため、間取りの自由度が低くなります。開口部や窓を多く設けたり、柱のない大空間を作ったりする設計は難しいでしょう。
・気密性が低い
木材が持つ調湿性・通気性の高さは、反面で気密性の低さというデメリットにつながります。夏の暑さと冬の寒さを防ぐには、冷暖房の効きを良くするための対策が必要です。
3.鉄筋住宅のメリット・デメリット
鉄筋住宅は、木造住宅ほど一般的ではないものの、災害に強いマイホームを購入したい方の選択肢にあがることが多い住宅構造です。以下では、鉄筋住宅のメリット・デメリットを紹介します。
3-1.メリット
鉄筋住宅の代表的なメリットとしては「地震や火災に強い」ことが挙げられます。
鉄筋住宅は耐震性能が高いだけではなく、建材の鉄筋コンクリートが火・熱に強いため、火災が起きても建物は基本的に倒壊しません。
鉄筋住宅には他に、下記のメリットがあります。
・火災保険料を安く抑えられる
地震や火災に強い鉄筋住宅は、住宅の火災保険料を安く抑えられます。火災保険は長期にわたり支払い続けるため、火災保険料を安く抑えられると大きなコスト削減効果が生まれます。
・間取りの自由度が高い
建材の鉄筋コンクリートは強度が高く、大きな吹き抜けや開口部を設けた開放感がある間取りも選べます。
・資産価値が減少しにくい
鉄筋住宅は耐用年数が木造住宅よりも長く、住宅の資産価値が高い状態を長く保てます。住宅を将来手放す場合にも、売却価格を高く設定できるでしょう。
3-2.デメリット
鉄筋住宅の最も大きなデメリットは「建築費用が高くなる」ことです。鉄筋住宅の建築費用が高くなる理由には、原材料である鋼材の価格が高い以外にも、人件費が影響しています。
鉄筋住宅を建てる場合は、コンクリートの打設作業など専門的な技術を持つ作業者が必要です。コンクリートを固める養生期間もかかるため工期が長くなり、人件費がかさんで建築費用が高くなります。
鉄筋住宅は他にも下記のようなデメリットがあります。
・建築できる住宅会社が少ない
鉄筋住宅は、木造住宅ほど一般的な住宅構造ではありません。「鉄筋住宅でマイホームを建てたい」と考えても、建築できる住宅会社がそもそも少なく、希望のデザインを実現できる住宅会社を見つけられない可能性があります。
・地盤が弱い土地には建てられない
鉄筋住宅は構造体が重いため、地盤が弱い土地では建てられない可能性があります。建てられる場合であっても、地盤改良や杭の打設といった工事が必要です。
4.木造と鉄筋のどちらが良い?
木造住宅と鉄筋住宅は双方にメリット・デメリットがあり、どちらを選べば良いか悩む方は多いでしょう。最後に、木造住宅・鉄筋住宅のそれぞれについて、どのような場合・人に向いているかを解説します。
4-1.木造住宅が向いている場合
「費用を抑えてマイホームを建てたい」方は、木造住宅が向いています。
木造住宅は建材の費用が安く、建築できる住宅会社の数も多い点が特徴です。費用を抑えながらも、豊富なバリエーションからマイホームのデザインを選べます。
国土交通省が公表したデータによると、2022年度の新設住宅戸数は約86万戸であり、そのうち木造住宅の戸数は約47万戸です。木造住宅の割合は約55%となっていて、半数以上の方が木造住宅の新築住宅を選んでいることが分かります。
4-2.鉄筋住宅が向いている場合
「災害に強く、安心して長く住めるマイホームを建てたい」方は、鉄筋住宅が向いています。
鉄筋住宅は耐震性能や耐火性能が高く、地震・火災といった災害が発生したときにも住宅の被害を防ぎやすい点が特徴です。建物の経年劣化も遅く、住宅を資産として家族に残したい方にも向いています。
また、鉄筋住宅は新築時の建築費用こそ高いものの、建築後の火災保険料や地震保険料は木造住宅より安くなる傾向があります。長期的な視野で住宅にかかるコストを抑えたい方にも、鉄筋住宅はおすすめです。
まとめ
木造住宅と鉄筋住宅には、さまざまな違いがあります。住宅を建てるコストは、鉄筋のほうが高いですが、耐震性や防音性能も鉄筋のほうが高いです。また、木造住宅よりも鉄筋住宅のほうが、耐用年数も長い傾向にあります。ただし、これらは一般的な傾向であり、住宅によっては木造でも高い耐震性・防音性能を実現できる場合もあります。
木造住宅と鉄筋住宅では、どのような方に向いているのかも異なるでしょう。木造住宅と鉄筋住宅の特徴を把握した上で、どちらで家を建てるべきか判断してください。